2019年7月1日より施行された規定「特別寄与料」をご存じでしょうか?法定相続人以外の人が、遺言により遺産の相続を指定されていなくとも、お金が受け取れるかもしれない制度です。
この規定により、今までの苦労が報われる人もいます。まずは、自分が特別寄与料の請求できる人に該当していないか確認をしておきましょう。
特別寄与料とは
特別寄与料とは、被相続人へ無償で尽くした法定相続人でない親族が、相続人に請求をできる金額のことです。改正される以前から、相続人には「寄与分」が認められていました。今回の特別寄与料は、相続人以外の親族が請求できる、この点が異なります。
適用はいつから
2019年7月1日以降に開始した相続からの適用です。つまり、2019年7月1日以降に亡くなられた被相続人であること、6月30日に亡くなられた被相続人は、適用外です。
特別寄与料を請求できる条件
特別寄与料が請求できる条件は、次のとおりです。
・被相続人の遺産を維持・増加させる行動をしてきた
・無料で寄与(療養看護や労務)をしてきた
・被相続人の親族だが相続人ではない
すべての条件に該当する人を特別寄与者と呼びます。
例えば、父親が亡くなり長男と長女の二人が相続人になりました。父親は数年前から介護が必要となり、長男の嫁が仕事を辞めそれにあたります。長女はたまにお見舞いに行く程度、共働きで仕事は続けていたため収入も長男夫婦より高いです。その後、父親は亡くなり相続が発生します。改正前は、仕事を辞め懇親的な介護をしてきたにも関わらず、長男の嫁は相続人ではありません。相続は長男と長女二人で分け合います。これではあまりに不公平です。
改正前でも、長男のサポートをしてきたことから、寄与分が認められることもありました。しかし長男の嫁が相続人になることはできません。今回の改正は、相続人でない親族が直接請求できる点がポイントです。これにより苦労が報われる人も増えてきます。
特別寄与料の請求方法
次に、先ほどの条件に該当する人はどのように特別寄与料の請求をすればよいのでしょうか。
請求ができる期間と請求先
相続の開始及び相続人を知ったときから6カ月以内、相続開始から1年以内とされています。請求先は、相続人に対してです。ただし、期間を過ぎたとしても、相続人が支払えば問題ありません。期間を過ぎることで、家庭裁判所への申立てができなくなります。
請求をするタイミングと金額
難しいのは、請求をするタイミングです。特別寄与料は、寄与分と異なり遺産分割協議により割合で支払われるものではありません。請求先は相続人なので、金額の決定は遺産の分配後になります。
長男の嫁のように、配偶者が遺産分割協議に参加をしていれば、その際に特別寄与料の請求があることを話してもらえば問題ないかもしれません。しかし、離婚した兄と一緒に暮らしていた妹、兄には子どもがいたが介護はすべて妹がしていたとします。兄が亡くなった後、相続人は子どもたちとなることから、介護をしていた妹は遺産分割協議の内容をなかなか知れません。このような場合では、遺産分割協議が始まる前に請求をする旨を伝えておくことが賢明です。逆を言えば、相続人は特別寄与者がいるかもしれないことを把握しておく必要も出てきたといえます。
金額に関しては、詳しい定めはありません。相続人との話し合いで決まります。利用される算出方法は、介護した日数×1日の介護サービスの日当(8,000円程度)です。目安として活用してください。
算出した特別寄与料が200万円で相続人が納得したとします。遺産が800万円あり、二人の息子がそれぞれ400万円を相続した場合、請求額は各々に100万円です。相続人が配偶者の場合、夫に対し請求をするとは考えにくいので、100万円の特別寄与料を得られます。
相続人が複数いる場合は、請求するのが大変で、支払いを拒むケースも考えられます。状況に応じ早めに請求する旨を伝えるようにしておきましょう。
特別寄与料を拒まれた時は弁護士に相談
以前より認められていた寄与分について、裁判が多々起きていたことから、特別寄与料の支払いを拒む相続人が多くいることが予想できます。拒まれた時は、すぐに弁護士へ相談をしましょう。
できれば、特別寄与者に該当すると分かった時点で相談することがおすすめです。相続人は、一度手に入れたお金を手放したくないものです。後から請求するリスクがあることから、早い段階で法律のプロである弁護士に依頼しておきましょう。