親や子供といった近しい家族が亡くなると、残された家族(配偶者・親・子供など)は、被相続人の遺産に対し、法定相続人となります。
法定相続人が2人以上になると、相続遺産をどのように分けるのか話し合わなくてはいけません。
そこで重要となるのが、遺産分割の内容を決める「遺産分割協議」です。
しかし、いきなり「遺産分割協議」といわれても、ほとんどの人が何をどのように進めていけば良いのかわからないのではないでしょうか。
そこで今回は、遺産分割協議についての具体的な流れ、遺産分割のやり直しはできる・できないケースについてわかりやすく解説していきます。
遺産分割協議とは?
そもそも遺産分割協議とは、残された家族(法定相続人)が、相続遺産の分配方法を決める話し合いです。
遺言書がない場合、法定相続人がどのように遺産を分配するのかを全員で話し合わなくてはいけないため、このような機会を設ける必要があるんですね。
また、遺言書がある場合には、基本的に記載されている内容にしたがって遺産分割を進めていくため、遺産分割協議が行われない場合もあります。
遺産分割協議の具体的な流れ
遺産分割協議は、相続人全員の話し合いからスタートし、速やかに話し合いが進めば、遺産分割協議が成立します。
遺産分割協議が成立した後は、内容を明確にするための「遺産分割協議書」を作成するのが一般的です。
ですが、遺産分割協議書は法的に強制されているものではないため、必ず作成しなければいけないというものではありません。
遺産分割協議書は、後の争いのリスクを軽減させるために、必要な証拠となるものです。
話し合いの結果、法定相続分にて分配されることが決定したのなら、特に協議書を作成する必要はないでしょう。
ちなみに、遺産分割協議が速やかに完了した後は、相続手続きへと移行していきます。
遺産分割協議を始める時期の目安
遺産分割協議は、期限が定められているわけではありません。
したがって、法定相続人の都合が良い時期に行われます。
ただし、法定相続人全員が集まらないと協議を始めることができないため、四十九日といった親族が集まるタイミングで行われるケースが多いでしょう。
遺産分割協議が決裂した場合は?
遺産分割協議が決裂してしまった場合には、調停にて遺産分割を行います。
この方法を「遺産分割調停」といいますが、家庭裁判所が間に入り、話し合いを進めてくれるものです。
なお、遺産分割調停になった場合の流れは、以下となります。
1. 遺産分割調停を家庭裁判所に申し立てる
2. 定められた調停期日に出頭する
3. 調停での話し合いが成立
4. 遺産相続手続きが開始
遺産分割調停で、話し合いが不成立となった場合は、裁判へ移行します。
調停から裁判へと移行しそうな場合には、相続に詳しい弁護士に相談しましょう。
不動産はどうやって遺産分割する?
相続遺産が、預貯金を始めとする現金であれば、遺産分割は速やかに行われる可能性が高いです。
しかし、相続遺産に不動産がある場合、以下の3つの方法にて遺産分割が行われるケースが多いでしょう。
共有分割による共同名義
共有分割による共同名義にする場合は、不動産全体を法定相続人全員で保有することになります。
この方法は後にトラブルが発生しやすいため、できる限り避けた方が良いでしょう。
代償分割による相当額の支払い
代償分割によって遺産分割を行う場合は、1人が不動産をすべて相続し、相当額の支払いを現金にて行うのが一般的です。
一言で簡単に表すのなら、不動産の持ち分を相当額で買い取ってもらう方法となります。
換価分割による現金の分配
換価分割は、不動産を売却して現金に換えてから、法定相続人で分割する方法です。
兄弟や姉妹間で遺産分割を行う場合には、この方法が用いられるケースが多いでしょう。
遺産分割のやり直しができるケース
遺産分割のやり直しができるのは、遺産分割協議で決められた相続だけです。家庭裁判所による審判や調停で決められた相続は、やり直しができません。
それでは、やり直しが行われる具体例をあげていきます。
すべての相続人が参加していない
遺産分割協議には、すべての相続人の参加が条件です。相続人が欠けている状況で決められた遺産分割協議は、無効といなります。また、あとから新たな相続人が見つかった場合も同様です。
逆の状況も考えられます。相続人だと思っていた子供の親子関係が、裁判により存在しないと認められた場合です。その子供を含めた遺産分割協議は、相続人以外のものが参加し決められました。もともとの相続権がないことから無効となり、遺産分割協議はやり直しです。
脅迫や詐欺が確認された
遺産分割協議において、相続人の間で脅迫や詐欺などが行われていた場合、それが認められれば無効です。そもそも脅迫や詐欺などで決められた相続分は、その内容自体がなかったものとして扱われます。
正しい方法で相続人同士が話し合い、遺産分割協議のやり直しをしなければいけません。
新たな遺産がでてきた
新たな被相続人の遺産が確認されたら、その遺産についてのみ協議を行います。前の遺産協議をやり直しするのではなく、その遺産についてだけです。
ただし、遺産分割協議に新たな遺産が見つかった時の対処法が盛り込まれている場合は、それに従います。
遺産分割協議をやり直しする時の注意点
遺産分割協議をやり直しするときの注意点は以下のとおりです。
不履行ではやり直しができない
遺産分割の不履行によるやり直しはできません。遺産分割協議で決めたにも関わらず、他の相続人が分割協議に則った支払いをしないこともあります。このような不履行を理由に、遺産分割協議をやり直すことはできません。
このケースでは、履行を求める訴訟を起こす必要があります。履行されないからやり直しといった方法には至りません。不履行がある場合は、すぐに弁護士へ相談し、話し合いで済まない場合は訴訟も視野に入れておきましょう。
相続人全員の合意が必要
遺産分割協議をやり直しする場合は、相続人全員の合意が必要です。一人でも認めなければ、やり直しはできません。ただし先ほども説明しましたが、全員の合意があった場合でも審判や調停で決められた遺産分割はやり直しできません。
新たな遺産が発見された場合も、相続人全員の合意があれば、やり直しができます。遺産分割協議書に新たな遺産が発見されたときの対処法を取り決めていたとしても、全員が合意すればやり直しです。以前の遺産分割を変更するのではなく、やり直しになります。
例えば、父親の農業を長男が引き継ぐため、被相続人の農地をすべて相続しました。しかし長男は交通事故にあい農業を営むことができなくなります。そのため、次男に農地を相続させたいと相続人全員が合意をすれば、やり直しが可能です。
遺産分割のやり直しを求めるときは弁護士へ相談
遺産分割協議は、速やかに行われるケースと調停まで発展するケースが、同じくらいの割合で存在します。また遺産分割協議のやり直しで悩まれているのは、他の相続人と折り合いが悪いからではないでしょうか。他の相続人との関係が良好ならば、相続人全員の合意を得るのは簡単です。
もし事前の話し合いが難しかったり、遺産分割のやり直しをしたかったりするならば、早めに弁護士へ相談をしましょう。一人で悩み、あきらめてしまうのはいけません。状況を整理し、早めに信頼できる弁護士を見つけることが大切です。
相続問題の強い弁護士へご相談したいなら、宇都宮にある宇都宮東法律事務所へお問い合わせすることをお勧めします。